LET’S LEAN IN!
シェリル・サンドバーグの著書『リーン・イン』で挙げられているいくつかの考え方をここでは紹介します。
世界を見渡せば、女性に基本的人権を認めない国がたくさんあります。ただし、「もっと悪い状況があるからといって、より良い状況を求めてはいけない」ということではありません。日本でも、女性をもっと社会で活躍できる社会に!との声が広がっていますが、まだまだ米国や他の先進国と比べるとかなりの差があります。2015年10月時点で、Fortune 500社でCEOを務める企業はわずか4.4%。一方、日本では2012時点で大企業の会長を務める女性は1人もおらず、取締役でさえも1.2%となっています。この日本、そして世界を変えていくためには、女性が一人でも多くリーダーとなり、より多くの女性に夢を追い求めるように励まし、より多くの男性に職場・家庭において、女性を支えるように呼びかけることが大切です。平等な世界への変化は一人から始めることができます。女性一人ひとりが一歩踏み出す(Lean In)することによって、「真の平等」という大きな目標に近づけるのです。リーン・インの中で紹介されている11つの考え方をご覧ください。
- 1. What Would You Do If You Are Not Afraid? (怖がらなければ、あなたは何をする?)
- 2. Sit At The Table (同じテーブルに着く)
- 3. Success and Likability (できる女は嫌われる)
- 4. It’s a Jungly Gym, Not a Ladder (ハシゴではなく、ジャングルジム)
- 5. Are You My Mentor? (メンターになってくれませんか?)
- 6. Seek and Speak Your Truth (本音のコミュニケーション)
- 7. Don’ Leave Before You Leave (辞めなければいけない時まで辞めないで)
- 8. Make Your Partner Real Partner (パートナーを本当のパートナーに)
- 9. Myth Of Doing It All (スーパーママ神話)
- 10. Let’s Start Talking About It (声をあげよう)
- 11. Working Together Towards Equality (ともに力を)
1. What Would You Do If You Are Not Afraid? (怖がらなければ、あなたは何をする?)
リーダーになる意欲に男女で大きな差が多くの研究で明らかになっています。例えば、マッキンゼーが社員4000人以上を対象に2012年に行った調査では、男性回答者の36%がCEOになりたい、と答えたのに対して、女性はたった18%でした。これらは様々な原因があるものの、ステレオタイプが無意識に働いていることが原因の一つとなのです。
だからこそ、女性には「リーダーをめざす男女の意欲に差がある」ことを知った上で、怖がらず、いつまでも高みを目指して欲しいのです。さて、あなたは何も怖がらなければ、何をやりますか?
2. Sit At The Table (同じテーブルに着く)
女性は日頃から無意識のうちに、自分を過小評価する癖がついていることが明らかになっています。研究でも、男性は仕事の成果を実際より高く見積もる傾向があるのに対し、女性は低く見積もる傾向があることがわかりました。また、男性の成功者に成功の理由は?と聞くと、「自分の実力」と答えるのに対して、女性は「幸運、周りの力のおかげ」と答えることを見ても顕著な差が現れています。これが原因で、女性は大きな責任のある仕事などを任せると「自分には無理だ」と思ってしまう傾向が男性より強く、自ら大きなチャンスを断ってしまうことが多くあるのです。
だからこそ、女性は、大きなチャンスが与えられた時、「無理」と考えるのではなく、自分の可能性を広げていくためにもチャレンジしていくことが必要です。そして、自分の意見が無視されたり、相手にされなかったりする場合はあるものの、手を挙げ続け、同じテーブルに着いて話し続けなければなりません。
3. Success and Likability (できる女は嫌われる)
コロンビア大学ビジネススクールで行われた実験で、ある架空の人物の成功物語を、第一グループにはハイディ(女性名)、第二グループにはハワード(男性名)と名前だけを変えて読ませました。そこで学生達が受けた印象を調査したところ、能力面で学生たちは両者を同等に評価したのに対し、ハワード(男性)の方が同僚として好ましく、ハイディ(女性)は「一緒に働きたくない」「採用したくない」人物とみなされたのです。これは、成功と好感度は男性の場合は比例するのに対し、女性は反比例するということを裏付ける研究結果となりました。つまり、女性のリーダーは世間一般的によく受け入れられておらず、女性は周囲から嫌われるのを防ぐために、自分自身の能力を疑問視し、自分の成果を過小評価してしまっているのです。
女性は、女性自身もこのステレオティピカルな考え方にはまってしまっていることを理解し、自分の能力を疑問視せず、自信を持つことが大切です。また、Facebook CEOのマッカー・サッカーバーグの言葉を借りれば、「何か新しいことをする時、何かを変えるとき、全員を満足されることはできない」のであり、全員から好かれようとすると、自分のやりたいことができない、ということを理解することが重要です。
4. It’s a Jungly Gym, Not a Ladder (ハシゴではなく、ジャングルジム)
世間では出世はハシゴにと例えられることが多いものの、実際はハシゴではなく、ジャングルジムのようなもので、様々なルートで高みを目指すことができます。そのためにシェリルが薦めているのは①遠い夢と②18ヶ月プランを考え、その2つが同じ方向を目指すようなプランにすることです。
そして、女性がジャングルジムで高みを目指す時に必要なことは、リスクを取ること・チャレンジすること・しかるべき昇進を要求することです。前述の通り、女性は自己の能力を過小評価する傾向にあります。ヒューレット・パッカード社の調査でも、男性はポジションに60%程度満たしていれば応募するのに対し、女性は100%満たしていると確信しない限り、応募しないという調査もあります。女性は「自分はまだふさわしくない」と考えるのをやめ、「私はこれをやってみたい。きっと仕事をしながら能力はついてくる」と考えって挑戦した方がいいのです。
5. Are You My Mentor? (メンターになってくれませんか?)
最近、メンターやスポンサーという言葉をよく聞くようになり、「メンターになって頂けませんか?」と全く知らない相手に頼むことも稀ではなくなった。メンターはお互いに助け合いたい、と思った時に関係が成立するものであり、見知らぬ人がメンターになっても関係は続かないことが多くあります。但し、メンターの存在は非常に大切なものの、女性はメンターやスポンサーを見つけにくいだけに、見つけようと躍起になりがちです。それもそのはずで、メンターの関係は、共通の利害をもつ者や、上下関係にある者の間で成立することが多く、だとすれば、上の地位にある男性が自然に若い男性のメンターになるケースがどうしても多くなるのは当たり前のことです。
だからこそ、我々は、男性のリーダーがこの供給不足に気づき、自分のメンティーの多様化を図るよう働きかけることが大切となるのです。そして、私たちも積極的に女性のメンターを探すだけでなく、男性のメンターを受け入れ、アドバイスをもらうと良いのです。
6. Seek and Speak Your Truth (本音のコミュニケーション)
自分の見方(自分にとっての真実)があれば、相手の見方(相手にとっての真実)があることを理解しましょう。自分だけが真実を話していると考えている人は、他人に黙れと言っていることと同じだからです。そして、相手が聞きたくない事実ほど長たらしい但し書きをつけず、率直に伝えましょう。そして、ユーモアを忘れずに有効に活用することで伝えにくいことも伝えやすくなります。最近の研究では「有能なリーダー」の形容として「ユーモアのセンス」がもっともよく使われることがわかったのです。
これからは、何を話すにしても本音で、でも相手の見方を気遣いながらコミュニケーションを取りましょう。そうすると、私たちは男性も女性もよりよい上司、パートナー、同僚になれるのです。
7. Don’ Leave Before You Leave (辞めなければいけない時まで辞めないで)
ある研究の調査結果では、女の子は、ごく小さいうちからバリバリ働くか、いいお母さんになるか、どちらかを選択しなければいけないというメッセージを受け取っており、大学生頃になると、早くも仕事上の目標とプライベートの目標の両立は難しく、一方を追求すれば他方が犠牲になると考え始めることがわかっています。この研究結果は、女性が無意識のうちに、仕事か家庭か選択するような環境が出来てしまっていることを意味しています。例えば、キャリアで高みを目指している多くの女性は、いずれ子供が欲しいと頭の中で考えているとする。そうすると、結婚相手とめぐり合った時に、当人は意識していなくても、将来生まれる子供に備えて、新しいチャンスに手を挙げるのをやめてしまうのです。
ここで言いたいのは、「子育てのために仕事をやめるのは、その必要が出来たとき、つまり子供が生まれた時だ」ということです。もちろん、出産後に仕事をやめて、子育てに専念することは、とても素敵な選択ですが、それを選択しなければならなくなる時まで、つまり、何も実際に起きていない段階で、頭の中で将来を考えて、チャンスを逃すのはもったいないということです。「選択の余地がある幸運な立場にいるなら、最後までその余地を残しておいて欲しい。仕事を始めるときから、出口を探さないで欲しい」ということなのです。
8. Make Your Partner Real Partner (パートナーを本当のパートナーに)
2010年の調査で、日本では育児・家事ともに女性は男性の5倍こなしているという結果が出ており、子供のいる共働き夫婦のうち、家事・育児・家計の負担を全て均等にしていると答えたのは、わずか9%でした。女性が職場でもっと力を持つ必要があるのに対し、男性はもっと家庭で力を発揮する必要があるのです。もちろん、男性が家庭に自らLean Inすることが最も大切ですが、女性がサポートできる方法としては、「彼を対等に、つまり対等の能力を持つ人として扱うこと」が大切になってきます。一度、彼に何かを任せたら、失敗しても、任せ続けることが大切です。(いくらオムツの替え方があなたより上手くなくても!)夫が家事や育児を担当するようになると、妻のストレス減り、夫婦の満足度が高まることや、妻が世帯収入の半分を稼ぎ、夫が家事の半分をこなすようになると、離婚率は半分に下がるという調査も出ているのです。
また、女性リーダーは独身が多いと考えられているようですが、実は、Fortune 500社の女性がCEOを務める会社のうち26人が既婚者なのです。これは、彼女たちは、本当の意味でのパートナーと出会い、お互いを支えあっているという良い証拠ではないでしょうか。
9. Myth Of Doing It All (スーパーママ神話)
「全てを手に入れる」そんな望みを抱くのは、女性にとっては危険な罠です。なぜなら、女性は、仕事場では、家庭や育児の負担の少ない男性の同僚と自分を比べ、家庭では専業主婦と自分を比べ、終始不安を抱えて、自信をなくしてしまうからです。だからこそ、女性は「自分の仕事をもっと上手にコントロールすること」が大切であり、自分で、ここまではできるが、これ以上はできないと線引きをすることが必要です。自分に出された要求を全てこなさないことが、長く仕事で成功を収める秘訣です。確かに、最初は不安だらけで、そんなことをしたら回りに嫌われるとか、考えてしまうかもしれません。実際にフレックスタイム制を利用した社員はしっぺ返しを喰うエースが多く、同僚に比べて熱意が足りないと評価されてしまうこともあります。社会が、もっと受け入れる体制を作っていくべきです。
でも、まず女性が「全て(家事・育児)をこなす」ことは不可能であることを知っておきましょう。そして、自分の幸せのために、できないことはできない、できることはできる、と線引きをしてみましょう。
10. Let’s Start Talking About It (声をあげよう)
女性の方々は「女性は社会進出すべき」とは思っているものの、自分はフェミニストではない、と思っている方がたくさんいるのではないでしょうか。研究でも明らかになっている通り、「フェミニスト」とみなされるのは、「何かひどく軽蔑的なあだ名をつけられたようなもの」とみなされるのと同じだと女性は感じているのです。伝統的な組織で成功する女性は、黙って同化するタイプ、言い換えれば「男の一人」になりきれる女性であることが多く、男性らしく振舞う女性が多いのも明らかです。但し、これは正しいアプローチなのでしょうか。このアプローチは、批判されることもなく、安全な方法かもしれません。でも、この戦略は女性全体に実りをもたらすものではなく、私たちは声をあげて、ジェンダーについて適切に発信いていく必要があります。声をあげ続け、他の人にもそうするよう励ましテイクことが大切なのです。
例えば、たいていの人が、ジェンダー・バイアスの存在を認めているが、自分は違うと言い張ります。これをバイアスの死角と呼ばれており、実際の調査でも、男女に対する先入観が無意識のうちに働いていることが明らかになっています。
だから、バイアスが存在しないふりをしたり、それについて沈黙を続けたりすることは、まず自分たちからやめましょう。
11. Working Together Towards Equality (ともに力を)
今日なお女性も男性も真の意味での選択肢はもっていません。だからこそ、男と女が共に目指さなければ、真の平等は実現できません。そして、何よりも、女性同士が助け合うことが重要です。とりわけジェンダー問題に絡む女性の言動は、女性同士から批判されることが多く、まずは、女性同士が助け合うことが大切なのです。
女性が大志を抱き、キャリアでの高みを目指す。そして、同性に手を差し伸べる。これが、女性がまず出来る一歩踏み出すことなのではないでしょうか。