国際男性デーイベント開催レポート

11/17 国際男性デー記念イベント開催レポート

Past Events

【11/17 Lean In Tokyo 国際男性デー記念イベント「昭和と平成時代で拭いきれなかった社会的常識を、令和で乗り越える!」】

昭和、平成の時代で拭いきれなかった社会的常識を乗り越え、「男だから」「女だから」を理由にブレーキを踏まなくても良い社会にするため、素敵なゲストを迎え、国際男性デー記念イベントを開催しました。

〈当日プログラム〉
1. ゲストトーク「令和時代に男性が考えたい 仕事と家庭の両立とは」:塚越学様(東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部/チーフコンサルタント、NPO法人ファザーリング・ジャパン/理事)
2. Workshop 「バイアスを乗り越える50の方法」 
3. パネルディスカッション:西村創一朗様・松尾ポスト脩平様・Lean In Tokyoメンバー 

1.ゲストトーク「令和時代に男性が考えたい 仕事と家庭の両立とは」

塚越学様(東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部/チーフコンサルタント、NPO法人ファザーリング・ジャパン/理事)

ご自身が理事を務めるファザーリングジャパンでは、「良い父親」でなく、父親であることを楽しんでいる「笑っている父親」を増やそうと活動されている塚越さん。海外事情を交え、バイアスの認識がどのように生じるのか、異なる認識を持つ人々がどのように助け合えるのか、説得力あるお話しをしてくださいました。
最近の若い男性は「イクメン」として意識が高いとのことです。しかし、パパがどんなに意気込んでいても、上司の理解がないこと、職場環境が育休に寛容でないことが壁になり、パパたちが望む「仕事と家事・育児の両立」を実現することができていないのです。ただ、男女共に個々人で出来ること、夫婦で出来ることもあります。

〈仕事と家庭の両立をめぐる男女の生きづらさ〉

生きづらさは大きく2種類に分けられる。

・一見、自分に選択権があるように見えて、実際、その選択は「何らかの力」によって勝手に選択させられる場合

・自由に選択しようとすると、とても大きな負荷がかかり、選択しようとしている自分が悪いかのように錯覚してしまう場合

原因の一つは、脳の構造(=スキーマ)にある。

スキーマとは、頭の中に蓄積された知識の枠組みのことであり、これまでの社会構造や文化(同じ期間に多くの人が同じ経験をすることでできるもの)の中で生きてきたことで頭の中に作られていくものである。。アンコンシャス・バイアスの原因と言われている。

社会構造を変えるには、大きな「取引コスト」が発生し、容易に変えられない。文化を変えるには、新しい文化を同じ期間に多くの人が同じ経験をする必要がある。。個人で出来ることは、社会構造や文化が変わるのを待たずとも、この時代で生きるために必要な情報を自ら入手して、スキーマをアップデートし、周りに左右されずに自分の人生を自分で選んでいくこと。

【国際比較】〈乳幼児を持つ父親の家事育児時間の現状〉

★日本の父親は特に家事に参画できていない

6歳未満児のいる夫の育児家事時間の国際比較

・育児時間

 日本49分 > フランス40分

 東京   1時間19分
 アメリカ 1時間20分

国によって計測期間はちがうものの、イマドキ日本男性は1日の育児時間はフランスを超えており、東京に限って言えばアメリカも超えている。

・家事時間
 日本   33分
 アメリカ 110分

一方、家事については、東京40分、全国一位の岩手でも48分であるため、日本の男性は世界と比較し家事をやっていない。

(平成30年版男女共同参画白書、平成28年「社会生活基本調査」)

★家事育児「行動」をしている人は3割

2010年以降の「イクメン」と呼ばれる現象も相まって、1日の育児家事時間はこの10年で伸びて来ているため育児家事をする男性が増えているかのように錯覚するが、育児家事「行動」の割合を見ると、乳幼児を持つ父親の「3割」が以前よりもさらに家事育児をするようになっているだけであって、残りの7割の男性は相変わらず育児も家事もしていない(総務省「社会生活基礎調査」)

〈令和の戦略は「一緒に経験する」〉

・性別役割分担→2人で3役割

時代の変化に伴い、令和で家庭を安定して築くには、父親と母親が「稼ぎ手役割」「世話役割」「教育役割」を一緒に習得することが大事。

男性は産む側ではないからこそ、「世話役割」を身につけるための特別な期間が必要となる。「育休」はまさにその貴重な期間の1つだろう。

・「母性」への大きな誤解

「母性」は女性だけに最初から備わっているものではない。男女とも、育児「経験」をすることで脳が変化し、子供への愛情が強まり、育児スキルも向上していく。

経験を繰り返すと脳が変わり、やがて子供を抱っこするとホルモンが出て幸せを感じるようになることが最近の脳科学でわかってきている

現状の日本では、母親学級や里帰り出産や育休など、男性が「母性」を獲得するほど育児「経験」できる体験学習の環境や風土がとても少ない。

・ ✕ 意識を変える → ○ 一緒に経験する

男女それぞれに呪いがかかっている。例えば、育休復帰前の女性社員を対象とした研修会で「子供が生まれるタイミングで夫に「育休はどっちがとる?」と聞きましたか?」と質問すると、いまだに1割も手を挙げる女性はいない。

「育休は女性が取るものだ」という思い込みが男性だけでなく女性にもあるのは明らか。こうした「呪い」から解放されることは大切。

「男が変われば」「意識が変われば」とよく言われるが、意識よりも経験が大事。夫婦で一緒に(家事・育児の)経験を!

負荷はかかるが、夫婦では自分で選択できるようにする。迷うということは情報にブレがあるということ。自分たちで選択できる人が増えてほしい。

2.Workshop 「バイアスを乗り越える50の方法」

Lean In米国本部公認ワークショップです。このワークショップでは、どんな種類のバイアスがあるのかなどを学びながら、複数の状況が生じた原因・取ることができるアクションを参加者と一緒に考えました。

ここで取り上げるケースは、実際に皆さんの職場で起こりうるものですが、職場以外のあらゆる場面で活用できる濃い内容となっています。

最初に、次のような前提を共有しました。

・誰もがバイアスの罠に陥る

・バイアスを知るだけでなく解決するためにアクションを取ることが必要である

・バイアスはジェンダーによるものだけではない 等

ディスカッションしたケースの一例は、「同僚が、『うちの育休促進やダイバーシティプログラムは無駄だ』と言うことがどうして問題なのか、どのように解決できるのか。」でした。

会場の参加者の方々は複数人のグループになって、とても熱心に意見交換をされていました。

ジェンダー・バイアスを感じる場面に遭遇し違和感を感じてきた方が、一歩踏み出し、アクションを起こす手助けとなれば幸いです。

Lean In米国本部のウェブサイトにも当ワークショップ”50 ways to fight bias”の詳細(英語版)が掲載されていますので、ご関心のある方は是非ご覧ください。(https://leanin.org/50-ways-to-fight-gender-bias)

3. パネルディスカッション:西村創一朗様・松尾ポスト脩平様・Lean In Tokyoメンバー 

 西村創一朗さんは、小学校一年生の頃から「自分が家庭を持ったら家事・育児をして、子供から愛される父親になりたい。」とご自身の理想の父親像を描いて来られました。

松尾ポスト脩平さんは、高校、大学、そして社会人になってからの豊富な海外経験をお持ちで、「フェミニスト」として本を出版される予定です。

キャリア・家庭含め、「昭和・平成の価値観」に囚われず、いつも自分の軸で選択して人生を歩んで来られたお二人。お話の中で特に印象的だった箇所を抜粋させて頂きました。

〈ジェンダー意識を持ち始めたきっかけは?〉

・西村さん

 「仕事も育児もやりたい人がやるといい」と考えている。両親の考えはそうではなく、父親が家事・育児を一切しないことが原因で両親が離婚した。小さい頃から、家事・育児を一人で背負う母親の苦しそうな姿を見て育った。小一くらいから、「自分が家庭を持ったら、家事・育児をして子供から愛される父親になりたい。」と思っていた。

〈55%の男性が「家事育児を男女平等に行いたい」のに、なぜ実際にはできない?〉

・西村さん 

職場環境の問題がとても大きい。家事・育児をする上では多くの時間が必要。しかし「家事や育児は女性

がするもの」という空気感が上司を始め社内のカルチャーにあると、「定時に帰りたい」と言いにくく、時間

を作りにくい。無意識に「家事・育児は女性がするもの」という考えが根底にある。家事・育児をしたいと

思っていても、親は正反対の価値観だったこともあり、料理をずっと奥さんに任せてきた人もいる。

〈男性が感じる生きづらさ、どうしたら解消できる?〉

・松尾ポストさん:パートナー、友人や家族、同僚で話し合う環境を作る。渡米した頃は最初のデートは男性が払う風潮があって、その背景には、男性の方が多く稼いでいる前提があった。当時付き合っていた女性(今のパートナー)も割り勘主義で、自分の考えを尊重してくれそうだと思い、デートを重ねた。「割り勘でもいいですか?」と自分の考え方を説明して話し合うことができると良い。

・西村さん:「デートで奢らない男性はカッコ悪い」と考えている女性がいるという点に関しては、男性だけでなく女性も一緒に変わらないといけない部分。「男性が稼いで家庭を支えなきゃいけない」、この強力なバイアスから男性を解き放つのは大事!一方、男性の生きづらさは女性の生きづらさに比べたら本当にわずか。男性は下駄を履かされている。女性がして褒められていないことで男性がちょっとして褒められている。もし男性が生きづらさを感じるなら、まずは生きづらさに苦しむ女性に何ができるかを考える必要がある。例えば、家事や料理を手伝うと申し出たりすることができる。そうしないと男性の生きづらさは解消されない。

〈どのようにしたら多様な働き方や個性を尊重する文化が醸成できるのか?〉

・松尾ポストさん

 香港の前職では、80パーセントが女性。多くの女性がリーダーシップを取っていた。

 当時、フルタイムで育児をしている職場の女性の夫にインスパイアされた。彼の家庭は素敵な仕組みになっていると思った。

ヨーロッパの友人もカップルで差別のない言葉遣いをしていたり、男性が家事をすることも多い。

日本語の言葉には「男性優位」が現れている。例えば「主人」、「家内」という言葉の漢字に見られる。

 そういう身近なところから考えたり、議論したり、何か実践していくと良い。

・西村さん

 企業文化に関して言うと、それは積み重なる地層のようなもので、帰ることはとても難しい。ようやく複業解禁の動きが出ているが、複業申請ゼロということが多い。制度というハードが変わっても、カルチャーというソフトが変わらなければ一人一人の価値観や行動様式も変わらない。

複業を認めるかそうでないかの判断をするマネージャーが若い世代の多様な価値観への理解を示すことができていない。多様な働き方や個性を尊重する文化をどう醸成するのか、これはとても難しい。そういう会社とは見切りをつけ、多様な働き方・個性を認める会社に民族大移動すること。例えば、総合商社の離職率が高くなっていて、それが間接的に会社を変えることになっている。いきなり転職はハードルが高いが、対話をするところから始めてみては。自分が「上司が育休を認めてくれるはずがない」と決めつけているケースもある。(塚越さんが一人目で育休を取るとき、8割から反対されると思っていたが、実際は8割の上司が賛成してくれた。)

ここで紹介したのは当日のお話のごく一部です。どのお話を書くか悩むほど、多くの気づきを得たイベントでした。バイアスや呪いは性別に関係なく誰もが持っているもの、こう認識するだけで大きな意味があります。そう自覚して初めて、自分と異なる価値観で生きている人と対話できるようになるからです。
登壇者の方々のお話を聴かせて頂きながら、自分の人生を生きている人の表情は見ていてとても眩しいものだと改めて感じました。
今回のイベントが、多くの参加者がまた新たな一歩を踏み出す(Lean In)ことに繋がっていることを願います。今回は、多くの方々にご参加頂き、ありがとうございました。特に、若い男性に予想以上に参加頂きました。
次は2020年の春に国際女性デーを記念したイベントを準備しております。皆様のご参加をお待ちしております!

タイトルとURLをコピーしました