〜DE&I推進に「男性の働き方の多様性が尊重されること」も含めることで、同活動が本来目指すところである「誰しもが生き生きと輝ける社会の実現」に近づいていくものと考察する〜
- 6割以上の男性が職場で男性に向けられる偏見に「生きづらさ」を感じていることが判明
- 性別など、属性による偏見を解消する「DE&I推進」には「男性への配慮がない」と感じている男性が半数以上にのぼることが判明
- 一方、「男性の多様性が尊重されること」もDE&Iの推進に含まれるならば、DE&Iに取り組むモチベーションは上がると回答する男性が60%を超えるなど、普段あまり着目されない男性の声が明らかに
【男性が職場で感じる「生きづらさ」とDE&I推進に関するアンケート概要】
【概要】
調査企画・実施:Lean In Tokyo
調査対象:日本国内で勤務する、性自認が男性の方
総回答数:435名
調査方法:オンライン上でのアンケート調査
【結果概要・考察】
今回の調査を通して、6割以上の男性が職場において「男らしさ」という固定観念やプレッシャーにより多少なりとも「生きづらさ」を感じていることが、2019年に引き続き明らかになりました。
近年、DE&I推進を通して性別や属性などによる偏見を解消していこうという動きが企業において盛んになりつつありますが、その対象に女性や外国人といった”マイノリティ”が取り上げられることは多い一方で、”マジョリティ”と見なされる男性が対象となることは少ない状況です。実際に今回の調査でも「DE&I推進に男性への配慮がない」と感じている男性は回答者の半数を超える結果となりました。つまり過半数の男性は、自分たちがDE&I推進の当事者という意識がないともいえます。
本来、DE&Iは性別や年齢、国籍、宗教、性自認、障がいなどによらず、それぞれの個を尊重し、平等な機会を与えられ、参加できるような環境をつくることです。この実現のためには社会全体の参加が不可欠となる中、男性の当事者意識を高めない限り、DE&I推進は片手落ちとなってしまいます。
そこで、Lean In Tokyoは本調査結果を踏まえ、企業におけるDE&I推進の中で「男性の働き方の多様性の尊重」に一層スポットライトを当て、DE&I推進の主題の一つとして男性の生きづらさも解消していくことを提案します。その結果として、男性も当事者意識を持って活動に参画することになり、誰もがより生き生きと輝ける社会の実現に近づけるものと考察しました。
【結果詳細】
- 6割以上の男性が職場で「男だから」という固定観念やプレッシャーにより生きづらさや不便さを感じていることが明らかに
職場で「男らしさ」を求められたり、「男だから」という固定観念やプレッシャーにより感じる「生きづらさ」について、64%の男性が多少なりとも「生きづらさ」と感じていることが明らかになりました。2019年に実施した調査では同数値が78%と今回調査ではその割合は減少(注2)したことになるものの、生きづらさを感じる男性がマジョリティである傾向は変わらず、また、生きづらさを「頻繁に感じる」と回答した割合は2019年時の17%から20%と増加傾向にあります。
年代別では20代が最も「頻繁に」もしくは「たまに」生きづらさを感じる傾向が強くなっています。一方、多少なりとも「生きづらさ」を感じている割合は30代と50代の方が多く、この傾向は前回調査の傾向をたどるものとなります。
- 「生きづらさ」を感じる具体的な場面としては、「昇進に対して野心的でなければいけない・競争に勝たなければいけないというプレッシャーを感じるとき」や「長時間労働や休日出勤を許容できなければいけない風潮」が上位に
働き盛りである20代~50代の全ての年代において、「男だから生きづらい」と感じる具体的な場面として「昇進に対して野心的でなければいけない・競争に勝たなければいけないというプレッシャーを感じるとき」や「長時間労働や休日出勤を許容できなければいけない風潮」がトップ3にランクインしました。
また、子育て世代が多いと考えられる30代、40代ではいずれも「収入が高く安定的な職業を選ばなければいけないという意識」が1位に選ばれています。本調査ではいま未だ「大黒柱」的役割が求められる男性の苦悩があり、ジェンダーバイアス(性別に関する固定観念・偏見)による役割分業意識は男女ともに根強いということが明らかになっています。
また、自由記述欄では「生きづらさ」を感じる場面として「小さな子供がいても毅然と長期の海外出張に出るのが業務の前提となっている点(現在の男性は基本50%で家事育児を分担しており、男だから家を空けられるというのは間違い)」といった、普段光が当たることが少ない共働き世帯の男性側の負担に対するコメントもありました。
- 「男らしさ」のプレッシャーを感じる原因は「社会全体の風潮」が最も多く、次に「男性の直属の上司」「男性の同僚・知人・友人」から
「男らしさ」のプレッシャーは誰から感じるか、という問いに対しては「社会全体の風潮」が54%(注3)と最も多いことが判明しました。すなわち、誰から言われたか具体的に思い当たる対象がいるわけではないものの、幼いころからの無意識下での刷り込みやメディアの影響などに起因することが考えられます。
また、次に多数を占めるのは「男性の直属の上司(23%)」と「男性の同僚・知人・友人(10%)」が続きます。多くの職場ではそもそも割合として男性が多いという前提は想定されるものの、男性が感じる「男らしさ」のプレッシャーは、実は男性同士で与え合っているものである可能性が示唆されています。
- 回答者の7割の職場ではDE&Iが「具体的な施策」を通して、もしくは「形式的に」は進められている中、DE&I推進に対する印象として35%が「ニュートラル(どちらとも言えない)」と回答
今回の回答者の70%の職場では一定以上のDE&I活動が推進されており、「まったく推進されておらず、組織的関心もない」職場はわずか1割にとどまりました。一方、DE&Iの推進に対しての印象では35.2%の回答者が「ニュートラル(どちらとも言えない)」と回答し、自由記述では「あくまで株価対策のために進めているのであって、社員の事を考えているわけではない、と感じている」、「どこへ行っても「女性」に特化した取り組みばかりが目につき、男性への差別ではないかと思う場面がある」といった、取り組みを疑問視する声も聞かれました。
- DE&Iには「男性への配慮がない」と感じている人が半数を超え、「男性の多様性が尊重されること」もDE&Iの推進に含まれるならば、DE&Iの推進を行うモチベーションは上がるという回答者は62%に上る結果に
DE&Iの中に男性への配慮があると感じるか、という問いに対して実に53.3%の人が「いいえ」と回答しました。その反面、62%の回答者が「男性の多様性が尊重されること」もDE&Iの推進に含まれるならば、DE&Iの推進を行うモチベーションは上がると回答し、男性がDE&Iに取り組むドライバーとして「男性(自分たち)への配慮」が大きく影響することがわかりました。すなわち、多くの男性がDE&I推進に対して完全に肯定的ではなく、距離感を持っている要因として、自分たちが尊重の対象とされていないと感じていることが挙げられます。
- もしも職場で「男らしさ」が求められないとしたら、多くの男性が「自分らしいワークスタイル・マネジメントスタイルになる」、「私生活を重視した時間の使い方をする」、「もっとやりたい仕事に挑戦する」と回答
職場で「男らしさ」が求められないとしたら、あなたはどう変わると思うか、という問いに対して多くの男性が「自分らしいワークスタイル・マネジメントスタイルになる」、「私生活を重視した時間の使い方をする」と回答しました。これは前述の生きづらさを感じる具体的な場面として挙げられた、「昇進に対して野心的でなければいけない・競争に勝たなければいけないというプレッシャーを感じるとき」や「長時間労働や休日出勤を許容できなければいけない風潮」の裏返しとなる回答と考えられます。
「男らしく」野心的に出世を望み、「男らしく」長時間労働を許容することに生きづらさを感じている男性は、その呪縛から解放されれば、もっと自分らしい人生を歩めるのではないでしょうか。そして、それは国籍や性的指向などに関係なく一個人が尊重されることと等しく、DE&I活動を通して推進されていくべきではないだろうかとも考えられます。
【まとめ】
- Lean In Tokyoは本調査を踏まえ、企業におけるDE&I推進の中で「男性のワークスタイル・ライフスタイルの多様性の尊重」に一層スポットライトを当て、DE&I推進の主題の一つとして男性の生きづらさも解消していくことで、誰しもが生き生きと輝ける社会の実現に近づいていくものと考察する
本調査を通して、Lean In Tokyoは男性が職場で感じる「男らしさ」へのプレッシャーによる生きづらさを明らかにしました。さらに、本来であれば性別をはじめとした属性による偏見を取り除いていく活動である「DE&I推進」の中には男性への配慮がないと感じている方が過半数であると分かった一方、そこに「男性の多様性が尊重されること」が含まれた場合、マジョリティの男性がDE&I推進に取り組むモチベーションが上がると判明しました。
この結果を踏まえ、Lean In Tokyoは企業におけるDE&I推進の中で「男性の働き方の多様性の尊重」に一層スポットライトを当て、DE&I推進の主題の一つとして男性の生きづらさを解消していくことを提案します。これにより、男性がより活動に対して当事者意識を持ち、積極的に取り組む結果として、DE&I推進が本来目指すところである「誰しもが生き生きと輝ける社会の実現」に近づいていくものと考察します。
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【調査企画・実施団体】
【Lean In Tokyoについて】
Lean In Tokyoは、Meta(旧Facebook)元 COOのシェリル・サンドバーグが著書『LEAN IN』を出版したことをきっかけに発足したLean In Orgという団体の日本における地域代表サークルです。私たちは、「女性、また不安を抱えるすべてのジェンダーの方が、Lean In=一歩踏み出し、自分らしく挑戦できる」ことを目標として活動しています。
【お問い合わせ先】
Lean In Tokyo(担当:河西)
E-mail:leanintokyo.org@gmail.com
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注1: DE&Iとは:性別や年齢、国籍、宗教、性自認、障がいなどによらず、それぞれの個を尊重し、どのような個人であっても支援され、参加できるような環境をつくること。また、すべての人が公平に情報、機会、リソースへアクセスできるように、ひとりひとりの状況に合わせてツールやリソースを調整して用意し、成功できるようにすること。
注2: 2019年の調査と今般の調査では回答者は異なる。
注3: 無回答者を除く割合。